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BBT「幸せの花束」後日談:1年後

  • 2016/01/24 10:54
  • Category: TRPG
ビーストバインドトリニティ、nemさんGM話題の「幸せの花束」、PC2枠で参加させて頂きました。
設定はこちら

珍しくキャラクター設定盛り過ぎまして、エンディングで消化しきれない部分とか含めてなんかSSが降ってきたので勢いで投下。
当然ネタバレ防止のためハンドアウトで分かるオープニング以外の部分、シナリオの中身には触れていない妄想話です。

めんどくさいので文章はもはや同卓者にしか分からない感じになってます。
最初だけ微妙に説明的で後ろの方がもはや会話だけでごまかしてあるのが力尽きた証拠。
雑過ぎて同卓者もよく分からなかったらすまん。

書き上げた後の反省の1つは、桂馬がもうちょい餌である闘争心くれくれマンになっても良かったかなあと思いつつ、ちょっと挟むタイミングが難しかったので空気を読んでもらった。
2つ目は、三人称と一人称がごっちゃりしすぎてて自分でも吐き気がする。
まぁあまりにも恥ずかしくなったら適当に消しときます。




朝5時。
アトラ=ロンネフェルトの朝は早い。
軽く伸びをした後、はだけた浴衣の共衿を直す。
そして機械的にさくさくと、敷いてあった布団を畳む。

結露の激しい窓にそっと息を吹きかけ、人1人分の幅で窓を開ける。
冬場のひんやりとした空気が心地よい。
無音の世界に、窓を開けた瞬間鳥のさえずりや虫の鳴き声、葉のこすれる音。
窓を開けることで浴びせられる自然の雑音が、彼女はとても好きだった。

この島国の奴らは、どうも寒がりが多すぎんじゃねえのか。
心の中で呟いた後、ふと振り返る。
瞬時目に映るのは、寒い閉めろ、と言って毛布にうずまる若い男の姿。
何もない畳を一瞥し、首を振った。

「あけましておめでとうございまス」

無機質な男声が脳に語りかける。

「喧嘩売ってんのか、桂馬」

「年は明けたゾ」

増殖体、桂馬。
彼女の古き血筋と、彼女が持つ深い闘争心に取りついたウイルスのような地球外生命体だ。
増殖体は彼女を魔族の世界に引きずり込む要因でもあるが、彼女らは比較的友好な関係を保っている。

その証拠に、彼女は自分が好きな将棋の駒の名前をやった。
“桂馬で詰めると、爽快感があるからな。ちょうどあたしにお前が力をくれて、兵装の力を放った。その時と、同じ感じ。あとこんな近くに人格のようなものを持つ奴が取りついてんだ、気ぃ狂うだろ普通。呼ぶ名前くらい気分良く呼ばせろ”と。

以来、人前ではあまり姿を見せないが、時々1人で物思いに耽っていると、こうして思考に割り込むように話しかけてくる。

「13ヶ月は、経ってない」

「なんだ、配偶者気取りカ」

言われて彼女は一瞬何のことか分からず、ただ分からないことはすぐ調べるというのは彼女の習慣だ、おもむろに本棚の「よくわかる冠婚葬祭」という本を取り出し――
“喪中”のページを開き、目をやると

“父母、夫の喪中期間は13ヶ月、妻は90日――”

ぎょっと目を見開き、舌打ち。
それは洋間の部屋に投げつけられた。

ばさばさどか。
朝の静寂に慌ただしげな音が響く。

「あんにゃろう、やっぱりあいつ殴りてぇ……」

「そういえばここで暮らし始めた頃言ってたナ。へええ兄弟とかでも意外と短いもんだ、これは知らなかっタ」

二重の皮肉に嘘。
既に他界した同居人、紅武からの置き土産。

憎々しげに虚空に目を逸らし眉間に皺を寄せた宿主をよそに、うっすらとした影が関心したように頷きながら折れた本ををぱらぱらとめくっている。

「この国の習慣は未だによくわかんねぇよ、常識教えてくれる奴が逝っちまったからな」

「死人に口無し、嘘ついたら針千本」

「飲ませらんねぇな……」

ふっと息をつく。
人前ではあまり見せない哀愁を漂わせるため息も、年明け前を振り返ればそこまで重くはない。
それを知るただ1つの生命体の影は、部屋の空気をかき混ぜるようにゆっくりと回りながら呟く。

「部屋も広くなったもんだよナー。布団すぐ捨てたし、てっきりとっとと引き払うのとばかリ」

「別に元々高いとこ選んだ訳じゃねぇからな。引越す手間考えたらこの方が合理的」

「なら、布団とっとけば良かったのニ。家賃を折半できル。また男でも女でモ、それこそ家のないあの愉快なホームレスに貸しつくってやれバ」

「冗談!」

メフィストフェレス、そのうさんくさいひげ面を思い出しながら鼻で笑う。

「ま、振り返れば去年はほとんど家に戻ってこなかったし、とっとと引き払うのもありだったかもな」

「ただえさえ将棋指してるか角材運んでるかだったのニ。去年はもっと酷かっタ。ボットウ、っていうノ? ああいうノ」

「食事くらいはまともに取らないと頭が回らない、というのは知識でなく経験として会得した。気を付けるよ」

ふわわ、とあくびをしながら続ける。

「集中力をつちかうには悪くない機会だったけど」

「目標は遠ざかったナ」

「ああ。落ちた2段分、いやそれ以上取り戻す」

「そうカ」

「できる。やる」

力強く返答した、金髪にきりっとした目がよく似合う。
“自己暗示は弱い奴がやるもんなのか、強い奴がやるもんなのかよくわかんねぇけど――多分、効果的に使えれば強みにはなる”というのが彼女の持論。

「とりあえず、やっか」

江戸間六畳の和室の隅にある、使い込まれた碁盤に駒を並べる。
ぱちん、ぱちんと小気味良い音が響く。
桂馬には見慣れた風景だ。

「気付いてるカ」

「ん? んん」

もくもくと指し続ける。

「ここ、こコ」

「んー……こうか」

ぱちん。

「あ、ちがウ」

「さっきからなんだよ」

怪訝な顔で返しながら盤上を見つめ、何かに気づき目を見開く。

「あー……」

「ネ」

「思い出さすなよ」

最後になった武との対局。
無意識のうちに、彼女はその対局を追想していた。
違うのは、かつて指した彼女の失着。

「あーもう……でもま、成長してるって分かってるだけマシかぁ」

「前にここに指した攻めすぎの一手も、オレは好きだけどナ」

「勝てなきゃ、意味ないの!」

いい加減長い付き合いだ、桂馬は将棋理解しているはずなのに意地が悪い奴だ、と思う。
考えるのに付き合えとは言わないが、時々こうして神経を逆なでする。

「指し方、ちょっと落ち着いたと思ウ。いつも武との対局は熱くなってたかラ」

「勝ちたい、勝ちたい、って気持ちは時々思考の邪魔をしてくるんだよ。
 上手い奴は上手いこと消化するんだろうが……まだまだ半人前だからな」

「お、珍しく弱気カ?」

「今思えばなんであんなに熱くなってたかなー」

ごろん、と座った体制のまま畳に横になる。
目の前の盤上のことを考えるのを諦めた。雑念が多すぎる。

「今は冷静になれタ。勝率は上がるゾ。勝てル。」

「お前の言葉は時々凄く不快だ……」

あいつが死んで、成果があった、良かった。
桂馬がそんなことを思っていないことくらい分かっている。
合理的な見解から出る発言なのを理解している。
それでも。

「アトラの言葉は時々理不尽ダ」

「るせー」

「むゥ」

「分かってるから言うな」

畳に頬をぴたりとつけて、深緑の縁を睨む。
その表情は険しいが、瞳に切なさが宿る。

「ま、確かに死ななきゃぁ気づかなかったかもしれないな」

「……」

怒られたので一時黙る桂馬。

「情がうつった」

「……」

「実は顔がちょっと好みだった」

「……」

「料理がうまかった」

「……」

「落ち着いた声が良かった」

「……」

「あいつが人と指してんの見る時、盤面だけじゃなかった、見てるの」

「……」

「あいつは、きっとあたしと他の奴の対局でも盤面しか見てなかったから――」

「……」

一拍置いて、なんか言えよ、と不満を呟きながら立ち上がろうとする。

過去のこと、と理解しているからだろうか。
自分がとんでもないことを言っていることに気づいていない。
ただ淡々と思いついた言葉を並べ立てていた。
そして紡ぐ言葉を失った後、気づく。

「アレ、終わリ? 愛の告白」

ずる、と踵を滑らせて立ち上がるのに失敗する。
みっともない形で浴衣をはだけさせた後、帯を直して立ち上がろうとするところに、追い打ちをかける桂馬。

「たまには墓参りいけバ」

「……」

耳を赤くしながら、どうにか立ち上がることに成功したので、とりあえず顔を洗いに行く。
歯を磨く。服を出す。
時折首をぶんぶん振りながら、ひたすら無言。
実体の無い桂馬は無視されると敵わない。

「理不尽ダ」

「……」


彼女は黙々と外出の準備を進めていた。
きゅ、とよそ行きの和服に腕を通す。

「出かけるのカ」

「なずなに餅でも貰いに行くよ。そこいらで羽子板でもついてんだろ」

「お年玉カ」

「子供が大人に……日本の文化は不思議なもんだ」

もしかしたら、桂馬は間違いに気付いたかもしれない。
が、さっき無視されたということもあるし、これは黙っておいた方が面白そうだ、と思ったに違いない。

「餅貰ったら」

「ラ」

「そのままメフィのホームレス仲間と指す。どーせあいつらなら正月は暇だろ」

「ふム」

「仕事しなくても良い時間は大事にしないと」

「でも、アトラは仕事も嫌いじゃなイ」

「まぁな。何かあって、借金したくねぇのもあるし」

「お金なんて安いものだロ。もっと高いもの、借りてル」

下駄を履くのにしゃがんで曲げた腰がぶるっとする。
嫌なことを思い出した。

「フランクの野郎、あれから何も言ってこねぇな……」

「忘れてるといいナ」

「あいつがこんなこと忘れる訳ねぇだろ! ……なぁ、悪魔の貸しって利子つくのか?」

苦虫を噛み潰したような顔をして、聞いた言葉の無意味さに腹を立てた。

考えても仕方がない。
解決できない問題がある時は、とりあえず前だけ向いて進むことも大事で。

「とりあえず、行くか」

「おウ」


揺れる金髪を吸いこむように扉は閉まり、再び部屋に長い静寂が訪れた。

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